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注意
当ブログは成人男性向けPC用ゲーム(いわゆるエロゲー)のストーリーについてを取り扱っております。
18歳未満の方の閲覧はお控えくださるようお願い致します。
記事はゲームの主要なストーリーについてを記載してありますので、重大なネタバレ要素を多量に含みます。
作品の記事について、未プレイの方及びプレイ予定の方の閲覧は自己責任でお願い致します。
特典内容やゲームについての細かい質問等があればコメントにどうぞ。
あけいろ怪奇譚 (シルキーズプラス WASABI)
2016/3/25
©SILKY'S PLUS
(注意)
ゲームのコンセプト上予備知識を得た上でプレイされた場合、娯楽性を大きく損ないます。
プレイ予定の方は閲覧を避けて頂くよう、強く推奨いたします。
キャラ設定等はHPに詳しいのでそちらで確認を。(ストーリーテキスト:6973字)
<ストーリー>
歳の離れた幼馴染の久住美里の元で世話になりながら、気の置けない雛森佳奈や中島修司といった友人たちと、何でもない学生生活を送る佐伯社。二ヶ月前にあった、四人もの生徒が立て続けに自殺を遂げるという事件も、社たちには遠い話だった。だが委員会で帰りの遅れた一月のある日、社はそれを見る。突然照明の落ちた廊下の先に立ち尽くす影。吸い寄せられるように一歩を踏み出した社の、その歩みを止めたのは見知らぬ一人の少女だった。銀の髪に白磁のような肌。異国の少女ベルベットは、社が呪われているという一言を残して立ち去る。俄には信じがたいその話を佳奈に打ち明けた社だったが、彼女はそれを深刻に受け止めたようだった。その夜幽霊を調べる為に学園屋上へ向かった二人はそこでベルベットを目撃し、そしてその姿は階下へと消える。明らかに助からない。だが慄く二人の前に金髪の異人、葛城葉子が現れるや否や、飛び散った血肉がかき集まりベルベットは立ち上がる。その姿を見た佳奈は呟く。鬼と。
手渡された名刺を頼りに葛城霊能探偵事務所を訪ねた二人。社は葉子から、この世には遺恨に囚われた霊が現実に存在することを明かされる。旧校舎の悪霊に佳奈だけでなく修司をも巻き込んでしまった社は、葛城事務所で世話になることを決意した。悪霊の糧となっている、憑き殺された人間についての情報収集、それが社たちに課せられた仕事となった。
そんな中、社は校内で二人の霊に相対する。それは学園七不思議、トイレの花子さんズで、その正体はこの辺り一帯の、名も忘れ去られた地主神だった。彼女らが朱子と呼ぶあの悪霊をかつて封じたという話に、社を守ってほしいと告げる葉子。社によってるり・るかと名付けられた二人は、捉えどころのない表情のまま、その頼みに頷く。
ある日社は葉子に連れられ、隣町の屋敷に足を運ぶ。かつては旧都で名を馳せた陰陽師でありながら、鬼の使役という外法を咎められ追放された、その末裔の加賀見家。親戚という縁から佳奈の下宿先だったそこで社は座敷童の伊予、そして三人の鬼に出会う。
七不思議の一つで放課後に現れる相談室の主、穏健な霊たちの指導的立場にあるマダムの協力もあり、社たちは情報を絞りつつあった。二ヶ月前に自殺した四人の女生徒。その一人の原田望は、佳奈と屈託なく笑いあい社に言い寄る現在の姿からは想像しがたいが、他の三人から虐められていた。七不思議を面白がり、朱子のものとされる靴箱に呪いの手紙が出され、絶望した望が呪い返したことが発端だった。加賀見の鬼、葵とアイリスの協力を得てそれを知った社と佳奈は、両者を説得し和解させることで成仏を試みる。
<佳奈バッドエンド>
だがそれは手遅れだった。朱子と同じ深い絶望に囚われた望はその快活さの裏で汚染されきっており、すでに同一の存在となっていた。三人の霊を異界に捕らえ屋上から突き落とし、永遠に叶う復讐に狂喜する望。それを制止する佳奈に対して、望は生者への憎悪をぶつける。意識を閉ざされつつある社が最後に見たものは、馬乗りになり呪詛を吐く望と、首を絞められ息絶えようとしている佳奈の姿だった。
社が目を覚ました時、そこには佳奈の姿があった。あの後朱子や望たちは成仏し、全てが終わったと語る佳奈。まるで腑に落ちない話だが、直後に聞かされた改めての恋の告白は、社の疑問の全てをさらっていく。これから始まる日々に社は胸を躍らせる。かつて恋心をそのようにあけすけに語らっていたのが誰であったか、その答えに気づくこともなく。
<佳奈エンド>
その前に朱子の力を削ぐべく、社たちは事の発端となった二人の霊に接触する。三十年前、水無月朱子を自殺に追い込んだ、その友人の古屋有香子と担任の神田川徹。朱子が創り出した異界、三十年前の学園で、二人は屋上からの投身を繰り返し続けている。朱子を妊娠させた神田川と、裏で密通し更には朱子を告発した古屋。自殺を繰り返し今では混ざり合った肉塊となったそれを、アイリスの力で思念を読んだるりとるかは浄化する。本人が願えばどんな存在でさえも救済を可能にする、それは鬼を超越する神の力。
だが望の憎悪は朱子の力を弱めてなお、尽きることない。睨みを利かせる葉子の存在、そして何よりあの三人とは違い魂から憎悪できない為に、佳奈を殺すことをしなかった望は朱子と共に眠りにつく。再びこの学園で殺意が抱かれた時、自分たちは目覚めるという呪いを残して。だがこの狭い箱庭の中でさえ人の悪意が絶えることはない。
人がいる限り、朱子と望はいつか戻ってくる。学園の探索の日々の中ですでに佳奈と相思相愛の恋人となっていた社は、彼女を守る為の力を願う。生徒たちの噂から生まれた本物のトイレの花子さん、そういった霊に慕われ力を借りることさえ可能な、誰もが持ち得ない才能が社にはあった。それは葉子の元で磨いていくことになるだろう。
それと並んで、生徒たちの悪意をとどめる活動も始めた二人。マダムの助言と協力から、旧校舎の悪霊に手紙を出そうとする者の元に人知れず警告を送る日々、それはいつかこの学園を守る霊という七不思議を生むことになるだろう。
<るり・るかエンド>
だが望を除く三人の霊と対面した瞬間、社は朱子に飲まれかける。控えていたベルベットによって一命を取り留めるも、社を蝕む汚濁は抜き差しならないものだった。もはや社たちにできることはなく、全ては葉子の手に委ねられる。家で寝込む社。生気を失いつつあったところに、るりとるかは自分たちを抱くように告げる。性行為、繁殖本能は生物だけが持つ生命の表れであり、亡者にとってそれは侵しがたい。逡巡の果てに社は二人と繋がる。それは社がそうだったように、神となって長い時を経た二人にとっても初めてとなる昂ぶりだった。
葉子によってあっけなく朱子が滅ぼされた、その翌日。呪いを受けてから宿っていた霊視の力が、社からは失われていた。近場の荒れた小さな祠、それが数百年前に飢饉の為に人身御供となった双子の巫女の碑だという美里の話にも、それを問える相手を社は失ってしまった。だが消沈する社、その前にひょっこりとるりとるかが現れる。霊とは違う二人はその意志で、何の力もない人間にもその姿を見せることができるのだという。
今では数少ない、祠を詣る住民の一人である美里が、何の疑いもなくその話を信じたのも幸いだった。るりとるかを加えて始まった新たな日々。人々に忘れられた神はいずれ消えてしまう。時代の流れとそれを認めたくない社は、るりとるかをこの世界に繋ぎ止める守り人となることを誓う。
それから長い時が流れ。人々の営みを守り続けたるりとるかは、社の家族たちに囲まれながら、変わらずこの街を見つめ続けている。木枯らし吹くその日、二人は病院の一室にいた。それはるりとるかにとって人としての死を迎えた時にもなかった、感情を揺さぶる別れとなった。人の生と死を見守り続ける二人の眼差しは今だけは、神ではなく。結ばれていたそこから抜け落ちた手に、涙の雫が重なる。
るりとるかに看取られながらその魂は今、遥かな旅路に出たのだった。
<ベルベットバッドエンド>
だが三人組の霊と相対した瞬間、社とベルベットは異界に飲み込まれる。そこを救ったのは葉子から連絡を受け、鬼たちを引き連れ現れた加賀見真だった。気を強くもてば霊は下がるという真の言葉通りに、一歩を踏み出した社は屋上に磔られていたベルベットを救い出す。社に霊への心構えを実践させると同時にベルベットに対しても何かを思い、真を動かした葉子。だが真と生まれて三年にも満たない鬼たちとの固い関係を前にして、ベルベットは自己嫌悪を抱くばかりだった。温かなその関係は余りにも遠く、自らは仲間である社の身一つさえ守れないでいる。
いつにも増して無感情さを表にするようになったベルベット。葉子はそんな彼女をデートに誘い、抱くよう社に促す。欧州の片隅で貧民として生まれ、女中として奉公に出た先で、魔術に傾倒する主人によって半ば偶然に不死という呪いを背負わされたベルベット。望まず続く生に倦んでいる吸血鬼。交尾の悦びの一つでも知ればその厭世観も幾らかは拭えるのではないかと。そんな葉子の放言に対しても、様々な葛藤があった。だがそれも、観覧車の中で頬を染め俯くベルベットを前にして、沸き上がる思いに圧倒されていく。気まぐれな葉子に命じられ見知らぬ男に抱かれるよりは、と呟くベルベット。彼女に死んで欲しくないという確かな思いと、その身体と繋がりたいという刹那じみた欲求。それらをないまぜにしながら、社はベルベットと肌を重ねる。だがその思いは、それを受けるに値しない死人の如き存在と自身を断じる彼女に届かない。
そのショックに付け込まれ、悪夢に操られる社。ふと気がつけばそこは屋上の縁だった。それまで社の身体に直接害意を及ぼしてこなかった朱子の一転した行動に、危機感を覚えたベルベットは決着を図る。葉子でさえ差し挟むことを許さない、これは自分と朱子だけの戦い。その意味を葉子から聞かされ、駆けつけた学園で社が見たもの、それは心臓を握り潰されるベルベットの姿だった。(※1)
全ての血液を凝固させ自らと朱子を覆い、砕くベルベット。
何の意味も見い出せなかった命を、想い人の為に投げ打つ。それはベルベットにとっての幸福だったが、社にはそうではない。あれから一ヶ月。薄っすらと埃が積もる事務所に葉子の姿はない。斜陽の中にあっても、社は腰を上げれないでいた。
待ち人は現れない。永遠に。
<ベルベットエンド>
(※1)
だがその直前に社は真から一つの知識を与えられていた。押し通る意志で亡者たちを振り払い、朱子に拒絶の言葉を叩きつけることでその忘我の腕の中からベルベットを取り戻した社は、自身の血を彼女の口に含ませる。それは生死を共に一つとする、鬼との契約。二百年近くの間、人の血を拒み続けてきたベルベットはそうして真の吸血鬼となった。かつての想い人と生き写しの顔をした社に拒絶され、憤怒に染まる朱子。その憎悪の化身を、ベルベットは一刀の元に両断する。
それ以来、二人は警察から小さな仕事を得ながら葛城事務所を維持している。そこに葉子の姿はない。それはまるで自立を見届け、見極めた男に娘を託す母親の姿のように、二人には思えた。葉子から与えられた名前と、記憶の積もったこの事務所を守っていく。それがベルベットが望む、それまでになかった感傷を含んだ生き方だった。
刹那でも永遠でもなく、人でも吸血鬼としてでもなく、ベルベットはこの先の未来を共に生く。社と、その命の終わりまで。
<葉子エンド>
身を守る術を得る為、取り憑かれやすい体質を活かし学園の七不思議の霊たちを取り込んでいった社。それでも朱子に身体の自由を奪われたことで、葉子は引き際と決断する。尻拭いをさせる形にはなるが、後は葉子に任せれば全てが終わる、社もベルベットもそう疑っていなかった。美里が学園屋上から身を投げ死んだという報せを受けるまでは。そして葉子にとっても。かつて占い業を営んでいた際に出会った、家族愛が過ぎた、だがどこか心地よい相手を自身が守れないなどとは。
朱子への怒りに呼応する社の中の霊たち。それに任せて社は朱子に襲いかかる。だが朱子はそれを意に介さず社と一つになろうと侵食を始めた。それに社は抵抗しない。あるいは朱子に囚われる美里の魂を解放できるのではないかという思惑があった。だが七不思議の霊、七人の犠牲者の魂、そして朱子の存在を纏めて留め置くには人の身では荷が勝ちすぎた。大量の魂と力を受け入れ混ざりあった社の魂と肉体は鬼へと変容し始める。負荷に耐え切れない形での圧壊、朱子が主人格となった鬼、暴力の手段だけを携えた怪物。それらの運命を跳ね除けたのは美里の意志と、この世界に繋ぎ止めようとする葉子の声だった。
かろうじて魂と肉体を維持し、混沌に沈まず戻ってきた社。だがその身体はすでに人のものではなくなっていた。この街に留まり続けることはもはやできない。社は葉子たちと共に街を去る。行くあてのない、風が吹くままのような旅。だが社は孤独ではない。鬼となった社に恐れを抱いたことを告白しながらもいつかの再会を約束する得難い友人、はらかたとなった妖狐と吸血鬼、そして何より側で見守り続けてくれる姉がこの胸の中にいる。
命をかけて生きる。美里へのその誓いを胸に、社は今日も生きている。葉子とベルベットという、新たな家族と共に。
<美里エンド>
身を守る術を得る為、学園の七不思議の霊たちを取り込む社だが、それは同居する美里に霊障という形で影響を及ぼす。今にして思えば、これまで社を看病してきた美里が決まって直後に体調を崩すのも、その為であることは明白だった。酷い不調で寝込んだ美里が朱子に呼ばれ、真夜中に意識のないまま学園へと向かおうとしたことを聞かされた葉子は、段取りも思惑も全てを放棄して敵を討つ決断を下す。
葉子によって朱子が滅ぼされ、平穏が戻った日常。だが社の胸にはしこりがある。近所の荒れた祠、それはるりとるかのものだったが、折に触れてそこを訪ねては、社の厄を身代わりさせてほしいと祈願していた美里。それを知らずにいた自身に自己嫌悪を覚えると共にどうにか恩返しをしたいと願う社だが、美里は重く捉えないで欲しいと返すばかりだった。社の性格を鑑みれば、自らの幸福を二の次にして、姉の為に一生を無為にする。そう考える美里は自身が小説家となった原点でもある、自身と社をモデルに書いた恋愛小説を取りあげる。現在でも続く、いわゆる黒歴史。それで失望を誘おうとした美里だが、なんのことはない。それは社に、自身の思いを再確認させるだけの結果となった。美里は姉と弟という立場に囚われすぎていた。二人が家族で、仮に恋人が許されない関係だったとしても、夫婦という家族になること。それに何の問題があっただろう。臆病さを乗り越え、相思相愛という、今更ながらにすぎる事実に二人は行き着く。
それから幾らか時を重ね、二人は今日、その愛を永遠として誓う日を迎える。日々身体を重ねながらも、この時の為に堪えてきた、たった一つの行為。それは彼女を守れるに足る男になれた時にこそと決めていた。積み重ねたその思いを乗せ、社は初めての口づけを交わす。
<トゥルーエンド>
望に異界に囚われた社はそこで、水無月朱子の記憶を目にする。妻子がありながら生徒の古屋と不義密通し、悪びれる様子もない神田川。親同士の面識から顔見知りという程度の関係を勘繰りし、的外れで一方的な妬みを朱子に抱く古屋。それが表沙汰になりかけた時、古屋が考えたのは、神田川に朱子を犯させることだった。不純交遊の噂を朱子に被せ、神田川には議員である親の力で醜聞を揉み消させるという最低の発想。にもかかわらず朱子が望まぬ妊娠を強いられたと知るや、嫉妬に狂う古屋は彼女を屋上から突き落とす。自身に抱かれる女は全て幸福だとする自己愛の塊である神田川と、人を人とも思わない古屋が、自殺というまるで似合わない結末を迎えたのは、事件をきっかけに生徒たちの間で流れた怨霊の噂、その幾多にも重なった言霊の力を朱子が纏った為だった。
神田川と古屋を異界で殺し続けるも、身を焼き続ける憎悪に、疲れ果てていた人間としての朱子。現れた地主神に望んで眠りについた朱子だったが、三年間をいじめ抜かれ自殺した望の絶望がその眠りを覚まさせ、二つの憎悪は混ざりあい別の存在となる。自身と違い、望は哀しい犠牲者にすぎない。解放してやってほしいと、夕暮れの図書館に佇む朱子は社に願う。
望の無念を晴らす。それは殺されてなお、三年間の責め苦を悪ふざけだったと言いのける三人組に打ち勝つことだった。旧校舎の悪霊としてではなく。縛られた過去に引きずられ謝罪しかける望。社はその背を押し、望に思いの丈を吐き出させる。居丈高に出れば素の望など造作もないと考えていた三人組にとって、反抗など思いも寄らないものだった。ついには仲間割れを起こし始めた姿は、憎悪と執着への虚しさを望にもたらす。
全ての憎悪を抱えた望が思い残しなく逝ったことで朱子もまた、留まり続けたその余生を終える時がきた。想い人に声をかけることさえできなかったような少女は、黄昏の朱色の中に淡く溶けて消えていく。かつて想い人への思いを託し、そして今まで持ち続けた、鈴の音を残しながら。
それから一年。朱子への供養になればと、鈴に恋を託す七不思議を広める日々の中で、受験を乗り切った社たち。佳奈に修司と揃って地元大学への合格を果たし入学を待つばかりとなった三人は、その余暇を葛城事務所での手伝いで過ごしている。なんでもない日常。だがベルベットが、佳奈が、美里が、葉子が、るりとるかが、修司がいる。それは掛け替えのない、得難い幸福の光景だった。社はそれを朱子と望から教わった。いつ終わるともしれない命。だからこそこの幸福の瞬間を切に思い、命の続く限り懸命に生きる。それが死者である彼女たちが、生者である社に託した遺志だった。
苦難の時も、幸福の内にある時も。社は生き続ける。愛する人たちと共に。
<プレイ時間>
佳奈バッドエンド2(初回ルート)10時間18分、佳奈バッドエンド1時間54分、佳奈エンド4時間18分、るり・るかエンド4時間46分、ベルベットバッドエンド4時間19分、ベルベッドエンド4時間8分、葉子エンド4時間33分、美里エンド4時間49分、CG・チャート回収2時間2分、トゥルーエンド4時間9分。計45時間16分。
<グラフィッカー情報・敬称略>
岡田亮(グラフィックチーフ)、相澤健一、秋葉啓太、安斉隆浩、多田弘、安田和広、西沢謙志
<あとがき・2016/4/26>
プレイ時間帯が夜にかかった異界の学園怖すぎる…。演出もまた、延々と廊下を歩いたり窓の外に本当に何か落ちていったり、凄いんです。僕は酔眠が深いらしく夢は見ない体質ですが、これ現実に夢に見たら就寝内ショック死しそう。学校の怪談の騒ぎどころじゃない。
・CG+エロ
本当にシルキーズの塗りはなんというか…汗と汁気と肌の照り返し的に、服を脱いだ素っ裸同士でのセックスが一番エロい。素材の味は生が一番おいしいのだとかグルメ漫画みたいなよくわからない所感。葉子とか美里といった、すめらぎ氏の描かれるポッテリした唇に本当に合ってる塗りです。わりかし学生キャラを担当されることが多いんですが、歳上のおねいさんキャラの方がすめらぎ氏の絵的に好き。
・ストーリー
前作は悪人が人間側だった為に特にそういったことはなかったんですが、今回は霊の方に悪人がいたりで少しもにょる時も。根雪も含めてシルキーズプラスのゲームは霊や弱者を救うという展開が多いです。なので霊は救済することがほぼ確実なんですが、今回は生前の行いを見てると、救うべきか?とどうしても思わざるをえない。で、救わないと主人公たちの身が危なくなる為に、致し方なく折り合いをつけることを強いられます。レイパーや殺人者も別け隔てなく救わなければならないというのは感情的に難しい。この辺りの葛藤は主人公も吐露していますが、代弁してくれる分、幾らか溜飲は下がったでしょうか。
ただ今作のトゥルーは前作の琴莉のような存在がなかった為に、充実の内に読み終えた感がありました。葉子とベルベットが唯一街を去らないエンドだということもあって。
・シナリオ
なないろリンカネーションの二年後にあたる本作。梓は変わらず刑事のようですが、真との言及は特になし。由美の方は現在出版社勤め、元恋人という扱いで最近はいい感じらしいです。伊予に早く跡取りとせっつかれているようですが、まだ進展はないよう。ある故人に対して何か陰があるようなので、琴莉ルートの後日談という扱いでしょう。彼女のことを思うと自然に哀しくなる。
時に修司が誰も家に上げないと聞いて、絶対こいつ犯人やろ…と思ってました。社が手紙を出される心当たりがないということからも。修司絶対信用せんからな!佳奈とのかけあい面白いけど!残念なイケメン犯野郎と思ってたのに。結局最後までいいやつで、こっちが汚れた心の持ち主に思わされました。
基本CG数93(内乳首露出以上のエロCG数35)、回想数118。
エロ1CGあたりの尺は2分半(佳奈初体験挿入中断)から25分(ベルベット自室騎乗位)。平均13分。
永続ループBGVなし(ウィンドウボイスリピートループ機能あり)、永続ループBGエロSEなし、連戦時付着精液残留なし、尻モザあり、淫語P音修正なし。
(関連記事:なないろリンカネーション)
2016/3/25
©SILKY'S PLUS
(注意)
ゲームのコンセプト上予備知識を得た上でプレイされた場合、娯楽性を大きく損ないます。
プレイ予定の方は閲覧を避けて頂くよう、強く推奨いたします。
キャラ設定等はHPに詳しいのでそちらで確認を。(ストーリーテキスト:6973字)
<ストーリー>
歳の離れた幼馴染の久住美里の元で世話になりながら、気の置けない雛森佳奈や中島修司といった友人たちと、何でもない学生生活を送る佐伯社。二ヶ月前にあった、四人もの生徒が立て続けに自殺を遂げるという事件も、社たちには遠い話だった。だが委員会で帰りの遅れた一月のある日、社はそれを見る。突然照明の落ちた廊下の先に立ち尽くす影。吸い寄せられるように一歩を踏み出した社の、その歩みを止めたのは見知らぬ一人の少女だった。銀の髪に白磁のような肌。異国の少女ベルベットは、社が呪われているという一言を残して立ち去る。俄には信じがたいその話を佳奈に打ち明けた社だったが、彼女はそれを深刻に受け止めたようだった。その夜幽霊を調べる為に学園屋上へ向かった二人はそこでベルベットを目撃し、そしてその姿は階下へと消える。明らかに助からない。だが慄く二人の前に金髪の異人、葛城葉子が現れるや否や、飛び散った血肉がかき集まりベルベットは立ち上がる。その姿を見た佳奈は呟く。鬼と。
手渡された名刺を頼りに葛城霊能探偵事務所を訪ねた二人。社は葉子から、この世には遺恨に囚われた霊が現実に存在することを明かされる。旧校舎の悪霊に佳奈だけでなく修司をも巻き込んでしまった社は、葛城事務所で世話になることを決意した。悪霊の糧となっている、憑き殺された人間についての情報収集、それが社たちに課せられた仕事となった。
そんな中、社は校内で二人の霊に相対する。それは学園七不思議、トイレの花子さんズで、その正体はこの辺り一帯の、名も忘れ去られた地主神だった。彼女らが朱子と呼ぶあの悪霊をかつて封じたという話に、社を守ってほしいと告げる葉子。社によってるり・るかと名付けられた二人は、捉えどころのない表情のまま、その頼みに頷く。
ある日社は葉子に連れられ、隣町の屋敷に足を運ぶ。かつては旧都で名を馳せた陰陽師でありながら、鬼の使役という外法を咎められ追放された、その末裔の加賀見家。親戚という縁から佳奈の下宿先だったそこで社は座敷童の伊予、そして三人の鬼に出会う。
七不思議の一つで放課後に現れる相談室の主、穏健な霊たちの指導的立場にあるマダムの協力もあり、社たちは情報を絞りつつあった。二ヶ月前に自殺した四人の女生徒。その一人の原田望は、佳奈と屈託なく笑いあい社に言い寄る現在の姿からは想像しがたいが、他の三人から虐められていた。七不思議を面白がり、朱子のものとされる靴箱に呪いの手紙が出され、絶望した望が呪い返したことが発端だった。加賀見の鬼、葵とアイリスの協力を得てそれを知った社と佳奈は、両者を説得し和解させることで成仏を試みる。
<佳奈バッドエンド>
だがそれは手遅れだった。朱子と同じ深い絶望に囚われた望はその快活さの裏で汚染されきっており、すでに同一の存在となっていた。三人の霊を異界に捕らえ屋上から突き落とし、永遠に叶う復讐に狂喜する望。それを制止する佳奈に対して、望は生者への憎悪をぶつける。意識を閉ざされつつある社が最後に見たものは、馬乗りになり呪詛を吐く望と、首を絞められ息絶えようとしている佳奈の姿だった。
社が目を覚ました時、そこには佳奈の姿があった。あの後朱子や望たちは成仏し、全てが終わったと語る佳奈。まるで腑に落ちない話だが、直後に聞かされた改めての恋の告白は、社の疑問の全てをさらっていく。これから始まる日々に社は胸を躍らせる。かつて恋心をそのようにあけすけに語らっていたのが誰であったか、その答えに気づくこともなく。
<佳奈エンド>
その前に朱子の力を削ぐべく、社たちは事の発端となった二人の霊に接触する。三十年前、水無月朱子を自殺に追い込んだ、その友人の古屋有香子と担任の神田川徹。朱子が創り出した異界、三十年前の学園で、二人は屋上からの投身を繰り返し続けている。朱子を妊娠させた神田川と、裏で密通し更には朱子を告発した古屋。自殺を繰り返し今では混ざり合った肉塊となったそれを、アイリスの力で思念を読んだるりとるかは浄化する。本人が願えばどんな存在でさえも救済を可能にする、それは鬼を超越する神の力。
だが望の憎悪は朱子の力を弱めてなお、尽きることない。睨みを利かせる葉子の存在、そして何よりあの三人とは違い魂から憎悪できない為に、佳奈を殺すことをしなかった望は朱子と共に眠りにつく。再びこの学園で殺意が抱かれた時、自分たちは目覚めるという呪いを残して。だがこの狭い箱庭の中でさえ人の悪意が絶えることはない。
人がいる限り、朱子と望はいつか戻ってくる。学園の探索の日々の中ですでに佳奈と相思相愛の恋人となっていた社は、彼女を守る為の力を願う。生徒たちの噂から生まれた本物のトイレの花子さん、そういった霊に慕われ力を借りることさえ可能な、誰もが持ち得ない才能が社にはあった。それは葉子の元で磨いていくことになるだろう。
それと並んで、生徒たちの悪意をとどめる活動も始めた二人。マダムの助言と協力から、旧校舎の悪霊に手紙を出そうとする者の元に人知れず警告を送る日々、それはいつかこの学園を守る霊という七不思議を生むことになるだろう。
<るり・るかエンド>
だが望を除く三人の霊と対面した瞬間、社は朱子に飲まれかける。控えていたベルベットによって一命を取り留めるも、社を蝕む汚濁は抜き差しならないものだった。もはや社たちにできることはなく、全ては葉子の手に委ねられる。家で寝込む社。生気を失いつつあったところに、るりとるかは自分たちを抱くように告げる。性行為、繁殖本能は生物だけが持つ生命の表れであり、亡者にとってそれは侵しがたい。逡巡の果てに社は二人と繋がる。それは社がそうだったように、神となって長い時を経た二人にとっても初めてとなる昂ぶりだった。
葉子によってあっけなく朱子が滅ぼされた、その翌日。呪いを受けてから宿っていた霊視の力が、社からは失われていた。近場の荒れた小さな祠、それが数百年前に飢饉の為に人身御供となった双子の巫女の碑だという美里の話にも、それを問える相手を社は失ってしまった。だが消沈する社、その前にひょっこりとるりとるかが現れる。霊とは違う二人はその意志で、何の力もない人間にもその姿を見せることができるのだという。
今では数少ない、祠を詣る住民の一人である美里が、何の疑いもなくその話を信じたのも幸いだった。るりとるかを加えて始まった新たな日々。人々に忘れられた神はいずれ消えてしまう。時代の流れとそれを認めたくない社は、るりとるかをこの世界に繋ぎ止める守り人となることを誓う。
それから長い時が流れ。人々の営みを守り続けたるりとるかは、社の家族たちに囲まれながら、変わらずこの街を見つめ続けている。木枯らし吹くその日、二人は病院の一室にいた。それはるりとるかにとって人としての死を迎えた時にもなかった、感情を揺さぶる別れとなった。人の生と死を見守り続ける二人の眼差しは今だけは、神ではなく。結ばれていたそこから抜け落ちた手に、涙の雫が重なる。
るりとるかに看取られながらその魂は今、遥かな旅路に出たのだった。
<ベルベットバッドエンド>
だが三人組の霊と相対した瞬間、社とベルベットは異界に飲み込まれる。そこを救ったのは葉子から連絡を受け、鬼たちを引き連れ現れた加賀見真だった。気を強くもてば霊は下がるという真の言葉通りに、一歩を踏み出した社は屋上に磔られていたベルベットを救い出す。社に霊への心構えを実践させると同時にベルベットに対しても何かを思い、真を動かした葉子。だが真と生まれて三年にも満たない鬼たちとの固い関係を前にして、ベルベットは自己嫌悪を抱くばかりだった。温かなその関係は余りにも遠く、自らは仲間である社の身一つさえ守れないでいる。
いつにも増して無感情さを表にするようになったベルベット。葉子はそんな彼女をデートに誘い、抱くよう社に促す。欧州の片隅で貧民として生まれ、女中として奉公に出た先で、魔術に傾倒する主人によって半ば偶然に不死という呪いを背負わされたベルベット。望まず続く生に倦んでいる吸血鬼。交尾の悦びの一つでも知ればその厭世観も幾らかは拭えるのではないかと。そんな葉子の放言に対しても、様々な葛藤があった。だがそれも、観覧車の中で頬を染め俯くベルベットを前にして、沸き上がる思いに圧倒されていく。気まぐれな葉子に命じられ見知らぬ男に抱かれるよりは、と呟くベルベット。彼女に死んで欲しくないという確かな思いと、その身体と繋がりたいという刹那じみた欲求。それらをないまぜにしながら、社はベルベットと肌を重ねる。だがその思いは、それを受けるに値しない死人の如き存在と自身を断じる彼女に届かない。
そのショックに付け込まれ、悪夢に操られる社。ふと気がつけばそこは屋上の縁だった。それまで社の身体に直接害意を及ぼしてこなかった朱子の一転した行動に、危機感を覚えたベルベットは決着を図る。葉子でさえ差し挟むことを許さない、これは自分と朱子だけの戦い。その意味を葉子から聞かされ、駆けつけた学園で社が見たもの、それは心臓を握り潰されるベルベットの姿だった。(※1)
全ての血液を凝固させ自らと朱子を覆い、砕くベルベット。
何の意味も見い出せなかった命を、想い人の為に投げ打つ。それはベルベットにとっての幸福だったが、社にはそうではない。あれから一ヶ月。薄っすらと埃が積もる事務所に葉子の姿はない。斜陽の中にあっても、社は腰を上げれないでいた。
待ち人は現れない。永遠に。
<ベルベットエンド>
(※1)
だがその直前に社は真から一つの知識を与えられていた。押し通る意志で亡者たちを振り払い、朱子に拒絶の言葉を叩きつけることでその忘我の腕の中からベルベットを取り戻した社は、自身の血を彼女の口に含ませる。それは生死を共に一つとする、鬼との契約。二百年近くの間、人の血を拒み続けてきたベルベットはそうして真の吸血鬼となった。かつての想い人と生き写しの顔をした社に拒絶され、憤怒に染まる朱子。その憎悪の化身を、ベルベットは一刀の元に両断する。
それ以来、二人は警察から小さな仕事を得ながら葛城事務所を維持している。そこに葉子の姿はない。それはまるで自立を見届け、見極めた男に娘を託す母親の姿のように、二人には思えた。葉子から与えられた名前と、記憶の積もったこの事務所を守っていく。それがベルベットが望む、それまでになかった感傷を含んだ生き方だった。
刹那でも永遠でもなく、人でも吸血鬼としてでもなく、ベルベットはこの先の未来を共に生く。社と、その命の終わりまで。
<葉子エンド>
身を守る術を得る為、取り憑かれやすい体質を活かし学園の七不思議の霊たちを取り込んでいった社。それでも朱子に身体の自由を奪われたことで、葉子は引き際と決断する。尻拭いをさせる形にはなるが、後は葉子に任せれば全てが終わる、社もベルベットもそう疑っていなかった。美里が学園屋上から身を投げ死んだという報せを受けるまでは。そして葉子にとっても。かつて占い業を営んでいた際に出会った、家族愛が過ぎた、だがどこか心地よい相手を自身が守れないなどとは。
朱子への怒りに呼応する社の中の霊たち。それに任せて社は朱子に襲いかかる。だが朱子はそれを意に介さず社と一つになろうと侵食を始めた。それに社は抵抗しない。あるいは朱子に囚われる美里の魂を解放できるのではないかという思惑があった。だが七不思議の霊、七人の犠牲者の魂、そして朱子の存在を纏めて留め置くには人の身では荷が勝ちすぎた。大量の魂と力を受け入れ混ざりあった社の魂と肉体は鬼へと変容し始める。負荷に耐え切れない形での圧壊、朱子が主人格となった鬼、暴力の手段だけを携えた怪物。それらの運命を跳ね除けたのは美里の意志と、この世界に繋ぎ止めようとする葉子の声だった。
かろうじて魂と肉体を維持し、混沌に沈まず戻ってきた社。だがその身体はすでに人のものではなくなっていた。この街に留まり続けることはもはやできない。社は葉子たちと共に街を去る。行くあてのない、風が吹くままのような旅。だが社は孤独ではない。鬼となった社に恐れを抱いたことを告白しながらもいつかの再会を約束する得難い友人、はらかたとなった妖狐と吸血鬼、そして何より側で見守り続けてくれる姉がこの胸の中にいる。
命をかけて生きる。美里へのその誓いを胸に、社は今日も生きている。葉子とベルベットという、新たな家族と共に。
<美里エンド>
身を守る術を得る為、学園の七不思議の霊たちを取り込む社だが、それは同居する美里に霊障という形で影響を及ぼす。今にして思えば、これまで社を看病してきた美里が決まって直後に体調を崩すのも、その為であることは明白だった。酷い不調で寝込んだ美里が朱子に呼ばれ、真夜中に意識のないまま学園へと向かおうとしたことを聞かされた葉子は、段取りも思惑も全てを放棄して敵を討つ決断を下す。
葉子によって朱子が滅ぼされ、平穏が戻った日常。だが社の胸にはしこりがある。近所の荒れた祠、それはるりとるかのものだったが、折に触れてそこを訪ねては、社の厄を身代わりさせてほしいと祈願していた美里。それを知らずにいた自身に自己嫌悪を覚えると共にどうにか恩返しをしたいと願う社だが、美里は重く捉えないで欲しいと返すばかりだった。社の性格を鑑みれば、自らの幸福を二の次にして、姉の為に一生を無為にする。そう考える美里は自身が小説家となった原点でもある、自身と社をモデルに書いた恋愛小説を取りあげる。現在でも続く、いわゆる黒歴史。それで失望を誘おうとした美里だが、なんのことはない。それは社に、自身の思いを再確認させるだけの結果となった。美里は姉と弟という立場に囚われすぎていた。二人が家族で、仮に恋人が許されない関係だったとしても、夫婦という家族になること。それに何の問題があっただろう。臆病さを乗り越え、相思相愛という、今更ながらにすぎる事実に二人は行き着く。
それから幾らか時を重ね、二人は今日、その愛を永遠として誓う日を迎える。日々身体を重ねながらも、この時の為に堪えてきた、たった一つの行為。それは彼女を守れるに足る男になれた時にこそと決めていた。積み重ねたその思いを乗せ、社は初めての口づけを交わす。
<トゥルーエンド>
望に異界に囚われた社はそこで、水無月朱子の記憶を目にする。妻子がありながら生徒の古屋と不義密通し、悪びれる様子もない神田川。親同士の面識から顔見知りという程度の関係を勘繰りし、的外れで一方的な妬みを朱子に抱く古屋。それが表沙汰になりかけた時、古屋が考えたのは、神田川に朱子を犯させることだった。不純交遊の噂を朱子に被せ、神田川には議員である親の力で醜聞を揉み消させるという最低の発想。にもかかわらず朱子が望まぬ妊娠を強いられたと知るや、嫉妬に狂う古屋は彼女を屋上から突き落とす。自身に抱かれる女は全て幸福だとする自己愛の塊である神田川と、人を人とも思わない古屋が、自殺というまるで似合わない結末を迎えたのは、事件をきっかけに生徒たちの間で流れた怨霊の噂、その幾多にも重なった言霊の力を朱子が纏った為だった。
神田川と古屋を異界で殺し続けるも、身を焼き続ける憎悪に、疲れ果てていた人間としての朱子。現れた地主神に望んで眠りについた朱子だったが、三年間をいじめ抜かれ自殺した望の絶望がその眠りを覚まさせ、二つの憎悪は混ざりあい別の存在となる。自身と違い、望は哀しい犠牲者にすぎない。解放してやってほしいと、夕暮れの図書館に佇む朱子は社に願う。
望の無念を晴らす。それは殺されてなお、三年間の責め苦を悪ふざけだったと言いのける三人組に打ち勝つことだった。旧校舎の悪霊としてではなく。縛られた過去に引きずられ謝罪しかける望。社はその背を押し、望に思いの丈を吐き出させる。居丈高に出れば素の望など造作もないと考えていた三人組にとって、反抗など思いも寄らないものだった。ついには仲間割れを起こし始めた姿は、憎悪と執着への虚しさを望にもたらす。
全ての憎悪を抱えた望が思い残しなく逝ったことで朱子もまた、留まり続けたその余生を終える時がきた。想い人に声をかけることさえできなかったような少女は、黄昏の朱色の中に淡く溶けて消えていく。かつて想い人への思いを託し、そして今まで持ち続けた、鈴の音を残しながら。
それから一年。朱子への供養になればと、鈴に恋を託す七不思議を広める日々の中で、受験を乗り切った社たち。佳奈に修司と揃って地元大学への合格を果たし入学を待つばかりとなった三人は、その余暇を葛城事務所での手伝いで過ごしている。なんでもない日常。だがベルベットが、佳奈が、美里が、葉子が、るりとるかが、修司がいる。それは掛け替えのない、得難い幸福の光景だった。社はそれを朱子と望から教わった。いつ終わるともしれない命。だからこそこの幸福の瞬間を切に思い、命の続く限り懸命に生きる。それが死者である彼女たちが、生者である社に託した遺志だった。
苦難の時も、幸福の内にある時も。社は生き続ける。愛する人たちと共に。
<プレイ時間>
佳奈バッドエンド2(初回ルート)10時間18分、佳奈バッドエンド1時間54分、佳奈エンド4時間18分、るり・るかエンド4時間46分、ベルベットバッドエンド4時間19分、ベルベッドエンド4時間8分、葉子エンド4時間33分、美里エンド4時間49分、CG・チャート回収2時間2分、トゥルーエンド4時間9分。計45時間16分。
<グラフィッカー情報・敬称略>
岡田亮(グラフィックチーフ)、相澤健一、秋葉啓太、安斉隆浩、多田弘、安田和広、西沢謙志
<あとがき・2016/4/26>
プレイ時間帯が夜にかかった異界の学園怖すぎる…。演出もまた、延々と廊下を歩いたり窓の外に本当に何か落ちていったり、凄いんです。僕は酔眠が深いらしく夢は見ない体質ですが、これ現実に夢に見たら就寝内ショック死しそう。学校の怪談の騒ぎどころじゃない。
・CG+エロ
本当にシルキーズの塗りはなんというか…汗と汁気と肌の照り返し的に、服を脱いだ素っ裸同士でのセックスが一番エロい。素材の味は生が一番おいしいのだとかグルメ漫画みたいなよくわからない所感。葉子とか美里といった、すめらぎ氏の描かれるポッテリした唇に本当に合ってる塗りです。わりかし学生キャラを担当されることが多いんですが、歳上のおねいさんキャラの方がすめらぎ氏の絵的に好き。
・ストーリー
前作は悪人が人間側だった為に特にそういったことはなかったんですが、今回は霊の方に悪人がいたりで少しもにょる時も。根雪も含めてシルキーズプラスのゲームは霊や弱者を救うという展開が多いです。なので霊は救済することがほぼ確実なんですが、今回は生前の行いを見てると、救うべきか?とどうしても思わざるをえない。で、救わないと主人公たちの身が危なくなる為に、致し方なく折り合いをつけることを強いられます。レイパーや殺人者も別け隔てなく救わなければならないというのは感情的に難しい。この辺りの葛藤は主人公も吐露していますが、代弁してくれる分、幾らか溜飲は下がったでしょうか。
ただ今作のトゥルーは前作の琴莉のような存在がなかった為に、充実の内に読み終えた感がありました。葉子とベルベットが唯一街を去らないエンドだということもあって。
・シナリオ
なないろリンカネーションの二年後にあたる本作。梓は変わらず刑事のようですが、真との言及は特になし。由美の方は現在出版社勤め、元恋人という扱いで最近はいい感じらしいです。伊予に早く跡取りとせっつかれているようですが、まだ進展はないよう。ある故人に対して何か陰があるようなので、琴莉ルートの後日談という扱いでしょう。彼女のことを思うと自然に哀しくなる。
時に修司が誰も家に上げないと聞いて、絶対こいつ犯人やろ…と思ってました。社が手紙を出される心当たりがないということからも。修司絶対信用せんからな!佳奈とのかけあい面白いけど!残念なイケメン犯野郎と思ってたのに。結局最後までいいやつで、こっちが汚れた心の持ち主に思わされました。
基本CG数93(内乳首露出以上のエロCG数35)、回想数118。
エロ1CGあたりの尺は2分半(佳奈初体験挿入中断)から25分(ベルベット自室騎乗位)。平均13分。
永続ループBGVなし(ウィンドウボイスリピートループ機能あり)、永続ループBGエロSEなし、連戦時付着精液残留なし、尻モザあり、淫語P音修正なし。
(関連記事:なないろリンカネーション)
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