C¥Documents and Settings¥User¥My Document¥脳内彼女 プレイ済エロゲのストーリーを脳内に書き残しておく為のブロg彼女にドキュメントフォルダ開けられたら死ぬほど殴られた
注意
当ブログは成人男性向けPC用ゲーム(いわゆるエロゲー)のストーリーについてを取り扱っております。
18歳未満の方の閲覧はお控えくださるようお願い致します。
記事はゲームの主要なストーリーについてを記載してありますので、重大なネタバレ要素を多量に含みます。
作品の記事について、未プレイの方及びプレイ予定の方の閲覧は自己責任でお願い致します。
特典内容やゲームについての細かい質問等があればコメントにどうぞ。
その日の獣には、 (minori)
2019/1/25
©minori
(注意)
ゲームのコンセプト上予備知識を得た上でプレイされた場合、娯楽性を大きく損ないます。
プレイ予定の方は閲覧を避けて頂くよう、強く推奨いたします。
キャラ設定等はHPに詳しいのでそちらで確認を。(ストーリーテキスト:4107字)
<ストーリー>
高名な劇作家だった亡き母の背を追って、全国でも名門として名を馳せる、かつて初演間際に亡くなったとある演劇部員が願いを叶える幽霊となって時計塔に現れるなどというおとぎ話が生まれるほどの古い、歴史ある演劇部にこの春入部した友瀬律希と妹の瑠奈。璃奈は将来を有望視される名の知れた役者の卵。だが一年生は律希と璃奈が望む、全国大会に向けての夏の学内選考会にさえ参加を許されない。それは伝統という建前ではあるが、演劇という団体競技にチームワークを望めない新入生が立てる舞台はないとの理由もある。そんな演劇部を率いる部長に瑠奈の実績を前提にして、選考会に参加する為の型破りを試みる律希。幼馴染の池貝舞雪、病気がちで一人でいることが多かったクラスメイトの深浜祈莉、自身が誘った同じ新入部員の二人と共に選考会の出場を目指す。
だが現実はそう甘くない。一度瑠奈さえも凌ぐ眼を見張るような演技を見せた舞雪だが、その後は人が変わったように凡庸な実力に戻ってしまう。そしてそのような状況では律希が手がける脚本もままならない。瑠奈に幾ら演技力があろうがそれはあくまで学生レベルのものでしかなく、一人で劇を成り立たせられるほどのものではない。結果を出す為にはチームで当たるしかないが、舞雪が見せた幻に足を取られ満足するものが得られず、それが瑠奈のフラストレーションを募らせる。祈莉が卒業生の作品の中に見つけてきたという、「ソノヒノケモノニハ、」なる劇の脚本に触れたのはそんなさなかだった。魔女の討伐に向かった若者が敗北し獣の姿に変えられ森にさまよっていたところを、魔女に飼われていた花の精と心を通わせ、命を代償にした彼女の願いで人の姿を取り戻し救われるという物語。それに魅せられた律希たちはその物語を演じきることができれば選考会を勝ち抜けると確信する。
<瑠奈エンド>
物語のヒロインに高い演技力を持つ瑠奈を推した律希。だが選考会が迫るほどに瑠奈の焦りは増して行く。幾ら練習しても拭えない不安はいつも以上の苛烈さとなって舞雪や祈莉に当たり散らされるようになる。突如として瑠奈の演技が見違えるものとなりそれによってチームの余裕が生まれたのは、そんな矢先だった。そして同時に、部員たちや学年の生徒たちが前触れもなく急に瑠奈を持てはやすようになる。不自然なほどに余りにも唐突な変化。だがそのことに不審を覚える者は誰もいなかった。そもそも律希自身、憧憬じみた妹への心持ちに違和感はなかった。だから突然怒りを爆発させた瑠奈のことが律希には理解不能だった。迫ってきた瑠奈に押し倒され兄妹で肉体関係を持ってしまったことも。それでも瑠奈にこれからは自分だけのものと囁かれることに、幸福感に満たされた。
義理の兄妹ながら恋人となった律希と瑠奈。恋愛も演劇も満ち足りた中にあって、だがそれでも瑠奈は冴えない顔色を見せる。それは完璧な演技を終えた後だったり、愛していると律希が囁いた拍子に。そうして耐えかねたように瑠奈から律希は全てを打ち明けられる。時計塔に漂う亡霊のクロガネと契約し人に愛される才能を手に入れたこと。力を得たその代償として自身が最も大切にするもの、律希の記憶を奪われたこと。にわかには信じ難い話だったが、確かに会話が噛み合わない齟齬はあった。二人が演劇を志したきっかけ、幼い頃に見たという母が手がけた舞台のことも思い出せない。
愛も称賛も、望むものは全て手に入れたのにまるで満たされず、心は乾いていく一方。全てがお膳立てされ用意された、紛い物にしか感じられない。そしてこの先、本物の天才が現れた時、恥の余りその隣に並び立てないだろう。自身が選択した過ちとその行く先におののく瑠奈。そんな妹との将来を正し守り抜く決意で律希は時計塔に踏み入る。そうして律希たちは契約の破棄をクロガネに突きつけた。自身の弱さを認めてそれでなお歩もうとする瑠奈。そんな決意をつまらなさげに一笑したクロガネは、興味を失ったとばかりに瑠奈への執着を見せることはなかった。
自分たちだけの実力で臨んだ選考会はベストを尽くしたものの、優勝には至らなかった。だがクロガネが言い残したような後悔はなく、清々しささえある。挫折の中にも舞雪たちが言うように、目を見張る一瞬の手ごたえもあった。そうでなければ瑠奈が、全国大会のチームメンバーの一員として部長から誘われることもなかっただろう。
新たな経験を積むことができる場を与えられ奮起する瑠奈。そんな妹を前にして律希も脚本家を目指す夢追い人としての情熱を新たにする。来年には舞雪たちと再び、今度は自分たちだけのチームで全国大会を目指すだろう。あの日見た夢の舞台は今も二人の中に息づき、これからもそれを追い続ける。
<舞雪エンド>
その成長を願う意図もあって、自己犠牲を払う役に対しては舞雪が適任だと配役を決めた律希。だが舞雪が復調することはなく、また抱えている何事かへの悩ましさが一層その集中を欠かせているようだった。そんな中で律希は祈莉からその原因、自身に向けられる舞雪の気持ちについて示唆される。
以前、演技に悩んでいた舞雪に懇願され、まるで逃避のように身体を重ねたことがあった。舞雪もその行為に求める意味は口にせず、律希が混乱していたこともあって有耶無耶になっていた出来事。だが子供の頃から一緒にいる舞雪が気の迷いでそんなことをするはずがないと、自身が一番よくわかっていたはずだった。瑠奈たちとチームとして演劇に当たっている現状、そして幼馴染という今までの関係が変わってしまうことを恐れてその一歩を踏み出してこなかった律希。だがようやく自分の気持ちを認めてその言葉を伝えることができた。
そうして恋人となった律希と舞雪。そのことが作用したのか舞雪の演技に再び光が戻り始める。だがそんな矢先に舞雪がたびたび塞ぎ込むようになった。苦悩が深まれば深まるほどに劇と合致したその演技は迫真さを増していく。とはいえ律希もそんな状況は歓迎するところではない。
口を閉ざす舞雪をどうにか説得した律希は彼女が演劇部の幽霊、クロガネと契約していたことを知る。どんな人間も魅力する演技の力を与える代わりにその最も大事とするものを奪う黒衣の男。それによって舞雪の初恋が失われるという話は荒唐無稽なものにしか聞こえないが、彼女が嘘をつくとは思えず、事実これまでに見たその演技が説得力を持たせていた。
そして律希と舞雪はクロガネの前に立つ。なぜこんなことをするのかという律希の問いに、ただ最高の舞台が見たいからだと返すクロガネ。代償によって律希の愛情が失われれば舞雪は悲劇のヒロインとしてその台本の真に迫り、それは最高の舞台を生むだろう。その主張に、だが律希は到底そうとは思えなかった。最高の劇というものはすでに知っている。幼いあの日に瑠奈と見た母の舞台に、そのような悲しみはなかった。
律希は舞雪に、クロガネの力を捨てても自身の愛情が失われることは決してないと訴える。幼馴染を大切に思う気持ちはこの学園に入ってから、クロガネの前に立ってから湧いたような浅いものではない。その言葉に舞雪もようやく自らで踏み出す勇気を得た。
迎えた選考会で優勝することはできなかった。だが去り際のクロガネが言い残していったような後悔は二人にはなく、晴れ晴れとした気持ちですらあった。季節は秋となり、新たな歩みを初めた律希と舞雪。幼馴染の後を追ってその役に立ちたいが為だけに演劇をしていた舞雪は、今では自らの意志で望んで舞台に立っている。誰かの後ろではなく、その隣に寄り添って。
<祈莉エンド>
脚本を見い出してきた観察眼もさることながら、どこか浮世離れしたその独特の雰囲気から律希の考えるヒロイン像にしっくりきた祈莉。そんな彼女を劇のヒロインに選んでほどなくして、律希は当時演劇部だった学園の教師からその台本が、自身の母が初めて書き上げた作品だったこと、そして事故で亡くなった想い人を綴った物語だったことを知る。
劇と向き合う理由を新たに一つ得て、選考会に向けて励む律希。そんな中で律希はひたむきな姿の祈莉に、切々とした想いを徐々に自覚するようになっていく。あるいは初めからだったのかもしれない。一人きりでいた教室で初めて声をかけてくれた、あの日の放課後から祈莉がそうだったように。
想いを打ち明けあった二人は恋人となった。だが選考会の日が迫るにつれ、祈莉の情緒には不安定が増していく。大丈夫だと言われるたびに踏み込んではならないという気にさせられる律希。だがそれももう限界だった。そうして律希は祈莉の口から、彼女が亡霊のクロガネと契約していたことを知る。舞台を成功に導く力を得る代わりに、代償として律希たちから自身にまつわる記憶が奪われる。
そんな風にして得る、お膳立てされた勝利を、律希たちは拒絶する。手段や過程を問わず最高の結果だけを追い求めるクロガネと、祈莉に犠牲を強いる意思も理由もない律希たちの溝が埋まることはない。失望し契約を破棄して去っていくクロガネ。だが律希たちはクロガネの言うところの才覚なき有象無象たちの愚行、チームとしての努力で観客たちの心を掴む。クロガネでさえ戸惑いながらも認めざるを得ない祈莉の演技。ただそれだけでなく、表題の読点に続くこの物語の別の可能性を読み解き、獣と花の精として生き続ける結末を書き上げた。それは蛇足とも取られかねない選択だったが、いずれにせよクロガネは未練を満たして消え去る。
選考会で優勝を収めた律希たちは秋の全国大会への出場を決めた。新たな目標に向かう中、舞雪は自信をつけ、瑠奈は周囲に対して丸く穏やかになりつつある。そしてそんな変化は祈莉にも。劇の噂を聞きつけて話しかけてくるようになったクラスメイトとも馴染み、かつてあった孤独はもうない。
亡霊の消えた時計塔が再び時を刻み始めたように、生きているものは全ては移ろいゆく。だがそんな中でも変わらないものがある。台本に込められた恋が朽ちることないように。律希と祈莉の恋も変わることなく続いてそこにある。
<プレイ時間>
瑠奈エンド(初回ルート)10時間1分、舞雪エンド5時間39分、祈莉エンド7時間50分。計23時間30分。
<あとがき・2019/3/6>
minoriはこの作品をもってゲーム製作からは身を引くそう。自分がこのメーカーをプレイし始めたのはここ1年と最近ですが、それでも結構残念に思います。人気の高い古いメーカーだけに、過去作から付き合ってきた方はその比ではないと思いますが…。
急遽廃業が決まったのかこのゲームも、メーカー最後の作品としての記念作のように仕上げられた作りではなさそうだったのがまた返す返すも残念。
基本CG数224(内胸露出以上のエロCG数41)…エロ割合19%、回想数10。
永続ループBGVなし(台詞ボイス永続ループ機能なし)、永続ループBGエロSEあり、エロイベント連戦時付着精液残留あり、尻モザなし、淫語P音修正なし、立ち絵鑑賞モードなし。
2019/1/25
©minori
(注意)
ゲームのコンセプト上予備知識を得た上でプレイされた場合、娯楽性を大きく損ないます。
プレイ予定の方は閲覧を避けて頂くよう、強く推奨いたします。
キャラ設定等はHPに詳しいのでそちらで確認を。(ストーリーテキスト:4107字)
<ストーリー>
高名な劇作家だった亡き母の背を追って、全国でも名門として名を馳せる、かつて初演間際に亡くなったとある演劇部員が願いを叶える幽霊となって時計塔に現れるなどというおとぎ話が生まれるほどの古い、歴史ある演劇部にこの春入部した友瀬律希と妹の瑠奈。璃奈は将来を有望視される名の知れた役者の卵。だが一年生は律希と璃奈が望む、全国大会に向けての夏の学内選考会にさえ参加を許されない。それは伝統という建前ではあるが、演劇という団体競技にチームワークを望めない新入生が立てる舞台はないとの理由もある。そんな演劇部を率いる部長に瑠奈の実績を前提にして、選考会に参加する為の型破りを試みる律希。幼馴染の池貝舞雪、病気がちで一人でいることが多かったクラスメイトの深浜祈莉、自身が誘った同じ新入部員の二人と共に選考会の出場を目指す。
だが現実はそう甘くない。一度瑠奈さえも凌ぐ眼を見張るような演技を見せた舞雪だが、その後は人が変わったように凡庸な実力に戻ってしまう。そしてそのような状況では律希が手がける脚本もままならない。瑠奈に幾ら演技力があろうがそれはあくまで学生レベルのものでしかなく、一人で劇を成り立たせられるほどのものではない。結果を出す為にはチームで当たるしかないが、舞雪が見せた幻に足を取られ満足するものが得られず、それが瑠奈のフラストレーションを募らせる。祈莉が卒業生の作品の中に見つけてきたという、「ソノヒノケモノニハ、」なる劇の脚本に触れたのはそんなさなかだった。魔女の討伐に向かった若者が敗北し獣の姿に変えられ森にさまよっていたところを、魔女に飼われていた花の精と心を通わせ、命を代償にした彼女の願いで人の姿を取り戻し救われるという物語。それに魅せられた律希たちはその物語を演じきることができれば選考会を勝ち抜けると確信する。
<瑠奈エンド>
物語のヒロインに高い演技力を持つ瑠奈を推した律希。だが選考会が迫るほどに瑠奈の焦りは増して行く。幾ら練習しても拭えない不安はいつも以上の苛烈さとなって舞雪や祈莉に当たり散らされるようになる。突如として瑠奈の演技が見違えるものとなりそれによってチームの余裕が生まれたのは、そんな矢先だった。そして同時に、部員たちや学年の生徒たちが前触れもなく急に瑠奈を持てはやすようになる。不自然なほどに余りにも唐突な変化。だがそのことに不審を覚える者は誰もいなかった。そもそも律希自身、憧憬じみた妹への心持ちに違和感はなかった。だから突然怒りを爆発させた瑠奈のことが律希には理解不能だった。迫ってきた瑠奈に押し倒され兄妹で肉体関係を持ってしまったことも。それでも瑠奈にこれからは自分だけのものと囁かれることに、幸福感に満たされた。
義理の兄妹ながら恋人となった律希と瑠奈。恋愛も演劇も満ち足りた中にあって、だがそれでも瑠奈は冴えない顔色を見せる。それは完璧な演技を終えた後だったり、愛していると律希が囁いた拍子に。そうして耐えかねたように瑠奈から律希は全てを打ち明けられる。時計塔に漂う亡霊のクロガネと契約し人に愛される才能を手に入れたこと。力を得たその代償として自身が最も大切にするもの、律希の記憶を奪われたこと。にわかには信じ難い話だったが、確かに会話が噛み合わない齟齬はあった。二人が演劇を志したきっかけ、幼い頃に見たという母が手がけた舞台のことも思い出せない。
愛も称賛も、望むものは全て手に入れたのにまるで満たされず、心は乾いていく一方。全てがお膳立てされ用意された、紛い物にしか感じられない。そしてこの先、本物の天才が現れた時、恥の余りその隣に並び立てないだろう。自身が選択した過ちとその行く先におののく瑠奈。そんな妹との将来を正し守り抜く決意で律希は時計塔に踏み入る。そうして律希たちは契約の破棄をクロガネに突きつけた。自身の弱さを認めてそれでなお歩もうとする瑠奈。そんな決意をつまらなさげに一笑したクロガネは、興味を失ったとばかりに瑠奈への執着を見せることはなかった。
自分たちだけの実力で臨んだ選考会はベストを尽くしたものの、優勝には至らなかった。だがクロガネが言い残したような後悔はなく、清々しささえある。挫折の中にも舞雪たちが言うように、目を見張る一瞬の手ごたえもあった。そうでなければ瑠奈が、全国大会のチームメンバーの一員として部長から誘われることもなかっただろう。
新たな経験を積むことができる場を与えられ奮起する瑠奈。そんな妹を前にして律希も脚本家を目指す夢追い人としての情熱を新たにする。来年には舞雪たちと再び、今度は自分たちだけのチームで全国大会を目指すだろう。あの日見た夢の舞台は今も二人の中に息づき、これからもそれを追い続ける。
<舞雪エンド>
その成長を願う意図もあって、自己犠牲を払う役に対しては舞雪が適任だと配役を決めた律希。だが舞雪が復調することはなく、また抱えている何事かへの悩ましさが一層その集中を欠かせているようだった。そんな中で律希は祈莉からその原因、自身に向けられる舞雪の気持ちについて示唆される。
以前、演技に悩んでいた舞雪に懇願され、まるで逃避のように身体を重ねたことがあった。舞雪もその行為に求める意味は口にせず、律希が混乱していたこともあって有耶無耶になっていた出来事。だが子供の頃から一緒にいる舞雪が気の迷いでそんなことをするはずがないと、自身が一番よくわかっていたはずだった。瑠奈たちとチームとして演劇に当たっている現状、そして幼馴染という今までの関係が変わってしまうことを恐れてその一歩を踏み出してこなかった律希。だがようやく自分の気持ちを認めてその言葉を伝えることができた。
そうして恋人となった律希と舞雪。そのことが作用したのか舞雪の演技に再び光が戻り始める。だがそんな矢先に舞雪がたびたび塞ぎ込むようになった。苦悩が深まれば深まるほどに劇と合致したその演技は迫真さを増していく。とはいえ律希もそんな状況は歓迎するところではない。
口を閉ざす舞雪をどうにか説得した律希は彼女が演劇部の幽霊、クロガネと契約していたことを知る。どんな人間も魅力する演技の力を与える代わりにその最も大事とするものを奪う黒衣の男。それによって舞雪の初恋が失われるという話は荒唐無稽なものにしか聞こえないが、彼女が嘘をつくとは思えず、事実これまでに見たその演技が説得力を持たせていた。
そして律希と舞雪はクロガネの前に立つ。なぜこんなことをするのかという律希の問いに、ただ最高の舞台が見たいからだと返すクロガネ。代償によって律希の愛情が失われれば舞雪は悲劇のヒロインとしてその台本の真に迫り、それは最高の舞台を生むだろう。その主張に、だが律希は到底そうとは思えなかった。最高の劇というものはすでに知っている。幼いあの日に瑠奈と見た母の舞台に、そのような悲しみはなかった。
律希は舞雪に、クロガネの力を捨てても自身の愛情が失われることは決してないと訴える。幼馴染を大切に思う気持ちはこの学園に入ってから、クロガネの前に立ってから湧いたような浅いものではない。その言葉に舞雪もようやく自らで踏み出す勇気を得た。
迎えた選考会で優勝することはできなかった。だが去り際のクロガネが言い残していったような後悔は二人にはなく、晴れ晴れとした気持ちですらあった。季節は秋となり、新たな歩みを初めた律希と舞雪。幼馴染の後を追ってその役に立ちたいが為だけに演劇をしていた舞雪は、今では自らの意志で望んで舞台に立っている。誰かの後ろではなく、その隣に寄り添って。
<祈莉エンド>
脚本を見い出してきた観察眼もさることながら、どこか浮世離れしたその独特の雰囲気から律希の考えるヒロイン像にしっくりきた祈莉。そんな彼女を劇のヒロインに選んでほどなくして、律希は当時演劇部だった学園の教師からその台本が、自身の母が初めて書き上げた作品だったこと、そして事故で亡くなった想い人を綴った物語だったことを知る。
劇と向き合う理由を新たに一つ得て、選考会に向けて励む律希。そんな中で律希はひたむきな姿の祈莉に、切々とした想いを徐々に自覚するようになっていく。あるいは初めからだったのかもしれない。一人きりでいた教室で初めて声をかけてくれた、あの日の放課後から祈莉がそうだったように。
想いを打ち明けあった二人は恋人となった。だが選考会の日が迫るにつれ、祈莉の情緒には不安定が増していく。大丈夫だと言われるたびに踏み込んではならないという気にさせられる律希。だがそれももう限界だった。そうして律希は祈莉の口から、彼女が亡霊のクロガネと契約していたことを知る。舞台を成功に導く力を得る代わりに、代償として律希たちから自身にまつわる記憶が奪われる。
そんな風にして得る、お膳立てされた勝利を、律希たちは拒絶する。手段や過程を問わず最高の結果だけを追い求めるクロガネと、祈莉に犠牲を強いる意思も理由もない律希たちの溝が埋まることはない。失望し契約を破棄して去っていくクロガネ。だが律希たちはクロガネの言うところの才覚なき有象無象たちの愚行、チームとしての努力で観客たちの心を掴む。クロガネでさえ戸惑いながらも認めざるを得ない祈莉の演技。ただそれだけでなく、表題の読点に続くこの物語の別の可能性を読み解き、獣と花の精として生き続ける結末を書き上げた。それは蛇足とも取られかねない選択だったが、いずれにせよクロガネは未練を満たして消え去る。
選考会で優勝を収めた律希たちは秋の全国大会への出場を決めた。新たな目標に向かう中、舞雪は自信をつけ、瑠奈は周囲に対して丸く穏やかになりつつある。そしてそんな変化は祈莉にも。劇の噂を聞きつけて話しかけてくるようになったクラスメイトとも馴染み、かつてあった孤独はもうない。
亡霊の消えた時計塔が再び時を刻み始めたように、生きているものは全ては移ろいゆく。だがそんな中でも変わらないものがある。台本に込められた恋が朽ちることないように。律希と祈莉の恋も変わることなく続いてそこにある。
<プレイ時間>
瑠奈エンド(初回ルート)10時間1分、舞雪エンド5時間39分、祈莉エンド7時間50分。計23時間30分。
<あとがき・2019/3/6>
minoriはこの作品をもってゲーム製作からは身を引くそう。自分がこのメーカーをプレイし始めたのはここ1年と最近ですが、それでも結構残念に思います。人気の高い古いメーカーだけに、過去作から付き合ってきた方はその比ではないと思いますが…。
急遽廃業が決まったのかこのゲームも、メーカー最後の作品としての記念作のように仕上げられた作りではなさそうだったのがまた返す返すも残念。
基本CG数224(内胸露出以上のエロCG数41)…エロ割合19%、回想数10。
永続ループBGVなし(台詞ボイス永続ループ機能なし)、永続ループBGエロSEあり、エロイベント連戦時付着精液残留あり、尻モザなし、淫語P音修正なし、立ち絵鑑賞モードなし。
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