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注意
当ブログは成人男性向けPC用ゲーム(いわゆるエロゲー)のストーリーについてを取り扱っております。
18歳未満の方の閲覧はお控えくださるようお願い致します。
記事はゲームの主要なストーリーについてを記載してありますので、重大なネタバレ要素を多量に含みます。
作品の記事について、未プレイの方及びプレイ予定の方の閲覧は自己責任でお願い致します。
特典内容やゲームについての細かい質問等があればコメントにどうぞ。
オタサーの姫に告られた結果wwwww (パラダイム・ぷらぱら文庫)
2015/5/29
(注意)
予備知識を得た上で購読された場合、娯楽性を大きく損ないます。
購読予定の方は、閲覧を避けられることを強く推奨いたします。
(テキスト:3531字)
<第一章・愛の芽生え>
飯島尚樹はメディア研究会の紅一点、本多美憂によい心証を抱いていない。いかにもあざとい彼女の振る舞いと、それに熱を上げるオタクたち。そんな俗物と自分は違う。そう吐き捨てながら、彼女の甘ったるい声に耳をそばだて、その横顔と肢体を目で追う自身に尚樹は気づいていない。
そんなある日、居眠りから覚めた尚樹は部室で美憂と二人きりという状況におかれていた。慌てふためきながら芸術について口走る、持ち前の高尚ぶりを発揮する尚樹。だが嘲笑でも胡乱げな眼差しでもなく、美憂は真摯に言葉を紡ぐ。尚樹はそんな美憂に自らと同じ価値観を見い出し、その日から彼女への心証は決定的に変わった。
その日サークルの目を避けながら買い物に連れ立つ尚樹は、生理痛で辛いという彼女にその自宅へと誘われる。安静の為にと露出された胸と、重ねられる手。気がつけば尚樹は、美憂と身体を繋げていた。暴力で望まぬ初めてを経験したという美憂、そんな恋人を守れるのは自身だけという決意を、尚樹は改めて固くする。
<第二章・愛の開花と移ろい>
人間関係の破綻を厭う美憂。身体を踏み越えて仲を深められない日々に、サークルに対する尚樹の苛立ちは募っていく。そんな中で設けられた飲み会の席、美憂との体験談に興じる部員たちの下世話な盛り上がりに、尚樹は怒りを爆発させる。ありもしない酷い妄言だと激昂する尚樹に一瞬呆気にとられ、そして哄笑する部員たち。剣呑さが漂いだす席だが、そこへ隣から声が掛かる。同じ大学のヨット部員の鍛えられた体躯と自信に満ちた物言いに部員はおろか、ことの発端である尚樹も尻切れな言葉さえ返すことができない。怯える美憂を連れ去るその行動を咎められる者はいなかった。男の胸にしなだれかかり、オタクたちを笑い飛ばしながら夜の街に消えていく、泥酔した美憂。それを目撃した部員たちは悲憤と共に一つの決意を共有する。
数日後、雑誌モデルの募集という名目で、姿を現さなくなった美憂をおびき寄せた部員たち。償いとかこつけて行われる、拘束した上での性的暴行。だが嬌声を憚らない美憂に、尚樹の憤りは他の者とは違う点を向いていた。なぜ拒まないのか、なぜ自身に助けを求めないのか。未だに自分だけは美憂を信じているというのに。溜飲を下げた部員たちが消え、尚樹は矢も盾もたまらず美憂の身体にむしゃぶりつく。ぐずぐずに蕩けた媚肉はようやく咥え込んだ対の肉に歓喜していた。
熱が去り、美憂にサークルを辞めることを提案する尚樹。だが撮られた写真の対処を挙げられない尚樹を前に、美憂は現状に従うことを選択した。自身が耐えればいつかは終わるとして涙ぐむ美憂。渋々それを受け入れた尚樹は、その時間を耐える為の絆が必要だと迫る。
<第三章・生の不安>
赤い首輪、二人を繋ぐもの。それがあれば信じることができた。眼前で犯され、よがる美憂を。汚され終わった恋人を浄化する為に抱く尚樹。
だが部員の傍若無人ぶりに思わず割って入ろうとした尚樹を、美憂は強い剣幕で遮る。性の捌け口となることに喜びを見い出だしているような美憂。だが尻すぼみな制止しか上げられない尚樹に時として、驚きのような、絶望のような、暗い目を向けることもあった。尚樹には恋人の真意がわからない。
夏休みの二人の時間を尋ねる尚樹に、美憂は怒りを爆発させる。好きだといいながら何もしない、することは酷いことだけ。何をしたいのか、何が望みなのか、尚樹だけは理解できないと叫びながら首輪を投げ捨てる美憂。
尚樹はそんな彼女を物陰に押し込む。自棄にある恋人を愛で癒やさなければならない。電気マッサージ責めには菊門を、口を汚された際は口淫で愛を注いだように、今回の菊座にも。ペットボトルから水を浣腸剤代わりに押し込み、大学構内を連れ回す尚樹。だが堪えきれずそれを噴出させる美憂を目の当たりにして、さすがに我に返った尚樹は、泣き崩れる彼女を抱えトイレに駆け込む。自身だけは側にいると首輪を握らせ、替えの服を用意する為に飛び出す尚樹。人気のなくなったトイレからは、何かを引きちぎり床に叩きつけ、壁を蹴りつける音がこだましていた。
<第四章・死>
しばらく距離を置いてほしい。美憂からメールを受け取った尚樹は夏を前にして腐っていた。時として行き過ぎたことはあれど、恋人の不貞を耐えている自身の真摯さを何故わかろうとしないのか。鬱々とした気分の転換にと出た街で、その苛立ちは怒りへと変わる。往来での露出に喜悦を浮かべる美憂と、この数日淫欲に耽っていたのだろう部員たちの会話。余りにも向こう見ずな部員と野次馬たちは駆けつける警察官によって現実に引き出されていく。誰もが我先にと逃げ出す中、へたりこむ美憂の手を尚樹は無意識の内に掴んでいた。路地裏で尚樹を認めるなり怯え出し、拒絶する美憂。そんな彼女には絆ではなく、支配こそが肝要であったことを尚樹は悟る。気がつけば眼前にはペットボトルを股間にねじ込まれ失神した美憂が倒れ伏していた。
夏期休講中、逃げるように実家へと戻った尚樹は、自身の保身を確かめる中で、美憂がアイドルとしてデビューしていたことをネットで知る。小さなライブハウスで見たその姿にこみ上げる衝動のまま舞台によじ登り、取り押さえられながらそれでも引き下がれず美憂の後を追った尚樹。その先のカラオケボックスで見たものは汚れきった美憂の姿だった。ライブの客らしき男たちがこれを最後に二度と近寄るなと気だるげにふんぞり返る中、尚樹は蠢くその窄まりに引き寄せられていく。あの日初めて腕の中に収まった際に見せた表情。テーブルの上で四つん這いに重なりあいながら盛った獣のように再び交尾に耽り始めた、美憂のその顔を、へたった下半身のまま床に崩れ落ちた尚樹は見上げ続ける。
尚樹は部屋で考え続ける。何の思惑もなく、腕に抱いた少女にただ愛を注げていれば。あるいは違った結末があったのではないかと。謝りたい、そして許されるのであれば。その一心で尚樹は電話をかけ続ける。夏が過ぎ、部員たちは冷水を浴びたかのようにサークルから遠ざかっていた。
履歴が積み重なる中、初めて途切れた呼出音。喫茶店に呼び出された尚樹は、どこか暗い美憂に借金をせがまれる。美憂は妊娠していた。すでに四ヶ月で時間がない。意識が白く覆われる中でその言葉は耳朶を震わせた。六月の夕暮れ。気がつけば尚樹は美憂に結婚を申し込んでいた。美憂の子であれば愛せること、二人と子供の将来。困惑していた美憂だが、尚樹の辿々しくも続けられる言葉に、いつしかその手を重ねていた。
<第五章・オタサーの姫が告白した結果>
店の中に放置された美憂は幾度かそこで声をかけられたことのある店員に保護された。パソコンを眺める男の、その股間に顔をうずめる美憂は、仕事の一つだという地下アイドル業に誘われる。姫、奴隷、美憂が次に浸ることになったのは偶像だった。客たちから向けられる熱っぽい、濁った視線は美憂を高揚させる。男たちに囲まれ白濁を陶然と受け止める美憂だったが、大人たちは面倒ごとを抱えない。夏の終わりと共に新人の旬も過ぎ、美憂は大学へと戻ることになった。それでもすっかり及び腰となった部員たちが近づくこともなく、一人の危険人物にさえ注意を払っていれば、大学生活は安泰なものに思われた。その変調が現れるまでは。
妊娠12週、数えで四ヶ月目。七月末から現れなくなった生理についての診断を、医師は祝福を添えて下した。その温かい相好に、喉が張り裂けんばかりに縋りつきたくとも、堕胎をとはどうしても切り出せなかった。腹がきりきりと痛むような焦燥感の中、ライブハウスの関係者に連絡を取る美憂。だがその直前で、廊下から漏れ聞こえたかつての声が甦る。責任など考えてもいない、誰の種かも知れない、便所女。初めから頼れる相手ではなかった。こういった面倒を半ば見越しての手切れ金であったのだろうから。絶望の中で美憂の手元にあったのは、数十件にも及ぶ履歴だった。
美憂の告白は思いも寄らぬ結末となった。結婚。そう囁かれたことは一度や二度ではない。だがそれはいつでも睦言の興でしかなく、ことが済めばティッシュに拭われシャワーに流される代物でしかなかった。少なくとも、このような追い込まれた場で出てくるようなものではなかった。
無思慮で利己的で、酷く嫉妬深い男。だがそれも愛情の一つで、間違いなく自身だけを見てくれている。自身ではない何者かを演じる必要がなくなったことに一抹の寂しさはあれど、尚樹であればその隙間をいつか埋めてくれるだろう。美憂は重ねた手の温もりに、それを通して生まれ来る二人の子、その未来図の幸福を夢見る。
<印象に残ったシーン>
「だめ…だめ、だめ、だめ、だめだったら!ほんと、だめだから。たすけて…おねがい、ねえ…ねえ、ねえっ…お願い、だからっ…!」
その声にただならぬ雰囲気を感じ、尚樹は腰を浮かせた。
美憂がすがるような目でこちらを見つめていた。
助けを求めている―?
(中略)
喉を反らし、舌を突き出し、まるで全身で快感を訴えるかのような姿。尚樹の抗議はたちまちかき消され、その悶えように部員たちが感嘆する。
間合いを外された尚樹は、嘆息とともに再び腰を落とした。
ふと顔をあげると、まだこちらを見ている美憂と目が合った。
懇願の視線は消え、まるで驚いているような、絶望しているかのような…。そんな彼女を見ているのが辛くて、わざとそっぽを向く。(第三章・148-149P)
メディア研究部の中でも、とりわけ最低の男。思い込みが強くて、プライドが高くて。独善的で。なにを考えているかわからなくて。ずっと恋人づらをしてつきまとって、さんざん身体を貪って…そして本当に危なくなったら、自分だけさっさと逃げてしまう。「僕が美憂を守るから!」前にそう言われたとき、一瞬、本当に嬉しいと思った。だけどそんな青臭い宣言など、今の彼の頭には、かけらも残っていないにちがいない。(第五章・227P)
「なんだか…尚樹くんって、本当に『桟橋の少女たち』だったんだね…」
「えっ…?それ、どういうこと…?」
「ううん、なんでもない。秘密だよ」(第五章・262P)
<あとがき・2015/8/31>
ゲーム版のあとがきに、美憂は自分の子供ができたら変われるんじゃないかと書いたんですが、小説版でその可能性を追ってくれた形でなんか嬉しくなりました。見事にハッピーエンドです。ツイッターは別として…。
汚らわしい純愛というのがシンボルワードなオタサーの姫でしたが、この小説版がもっともそれにしっくりくるものに感じました。自分以外の何かを愛することができない、相手の中に自分を見て恋していただけの、虚構の恋影とでもいうべきだった原作のエンド3よりも。他人を利用して省みない自己愛に満ちた人間同士が自分を見失った時、相手を自身に最も近しいものとして見ることが出来たという辺りが。愚かで身勝手でなおも利己的で欲望にまみれた、だけれどもそんな相手を互いに必要としている、汚れた愛という感じがしました。ツイッターは別として…。
最終更新が5分前なので、恐らく美憂はこれからも逞しく生きていくのでしょう。原作エンド1もそうですが、これが2 years agoとかになってたら大変後味が悪かった。そこら辺が救いです。
三章からはほぼオリジナル展開で、みさくら氏の描き下ろしイベント絵も何枚かありますので、ゲーム版が好きだった人は購読されることをお勧めします。
ムンク、桟橋の少女たち。これはどういう意図で語ったんでしょう。愛から生へ、不安から死へ。章タイトルはどれもムンクの描いた作品からよく感じられるとされるようなテーマではありますが。桟橋の少女たち。これは幾つか差異があるようで、どれにも共通して描かれているのは橋、少女たち、川、巨木。ライターの方の言わんとすることは正直わかりませんが、尚樹はこの絵の巨木ということでしょうか。橋を行き交って人々と出会う少女、それを綺麗な表の姿でも、水面に映った暗い影でも、木はそこにあっていつでも静かに見つめ続けている…。ということでしょうか。美憂という登場人物的にはそうであっても相手はこの主人公ですから、主観的には何か他の意味、ネガティブなものがあるような気がしてなりません。
(オタサーの姫に告られた結果:ゲーム版)
2015/5/29
(注意)
予備知識を得た上で購読された場合、娯楽性を大きく損ないます。
購読予定の方は、閲覧を避けられることを強く推奨いたします。
(テキスト:3531字)
<第一章・愛の芽生え>
飯島尚樹はメディア研究会の紅一点、本多美憂によい心証を抱いていない。いかにもあざとい彼女の振る舞いと、それに熱を上げるオタクたち。そんな俗物と自分は違う。そう吐き捨てながら、彼女の甘ったるい声に耳をそばだて、その横顔と肢体を目で追う自身に尚樹は気づいていない。
そんなある日、居眠りから覚めた尚樹は部室で美憂と二人きりという状況におかれていた。慌てふためきながら芸術について口走る、持ち前の高尚ぶりを発揮する尚樹。だが嘲笑でも胡乱げな眼差しでもなく、美憂は真摯に言葉を紡ぐ。尚樹はそんな美憂に自らと同じ価値観を見い出し、その日から彼女への心証は決定的に変わった。
その日サークルの目を避けながら買い物に連れ立つ尚樹は、生理痛で辛いという彼女にその自宅へと誘われる。安静の為にと露出された胸と、重ねられる手。気がつけば尚樹は、美憂と身体を繋げていた。暴力で望まぬ初めてを経験したという美憂、そんな恋人を守れるのは自身だけという決意を、尚樹は改めて固くする。
<第二章・愛の開花と移ろい>
人間関係の破綻を厭う美憂。身体を踏み越えて仲を深められない日々に、サークルに対する尚樹の苛立ちは募っていく。そんな中で設けられた飲み会の席、美憂との体験談に興じる部員たちの下世話な盛り上がりに、尚樹は怒りを爆発させる。ありもしない酷い妄言だと激昂する尚樹に一瞬呆気にとられ、そして哄笑する部員たち。剣呑さが漂いだす席だが、そこへ隣から声が掛かる。同じ大学のヨット部員の鍛えられた体躯と自信に満ちた物言いに部員はおろか、ことの発端である尚樹も尻切れな言葉さえ返すことができない。怯える美憂を連れ去るその行動を咎められる者はいなかった。男の胸にしなだれかかり、オタクたちを笑い飛ばしながら夜の街に消えていく、泥酔した美憂。それを目撃した部員たちは悲憤と共に一つの決意を共有する。
数日後、雑誌モデルの募集という名目で、姿を現さなくなった美憂をおびき寄せた部員たち。償いとかこつけて行われる、拘束した上での性的暴行。だが嬌声を憚らない美憂に、尚樹の憤りは他の者とは違う点を向いていた。なぜ拒まないのか、なぜ自身に助けを求めないのか。未だに自分だけは美憂を信じているというのに。溜飲を下げた部員たちが消え、尚樹は矢も盾もたまらず美憂の身体にむしゃぶりつく。ぐずぐずに蕩けた媚肉はようやく咥え込んだ対の肉に歓喜していた。
熱が去り、美憂にサークルを辞めることを提案する尚樹。だが撮られた写真の対処を挙げられない尚樹を前に、美憂は現状に従うことを選択した。自身が耐えればいつかは終わるとして涙ぐむ美憂。渋々それを受け入れた尚樹は、その時間を耐える為の絆が必要だと迫る。
<第三章・生の不安>
赤い首輪、二人を繋ぐもの。それがあれば信じることができた。眼前で犯され、よがる美憂を。汚され終わった恋人を浄化する為に抱く尚樹。
だが部員の傍若無人ぶりに思わず割って入ろうとした尚樹を、美憂は強い剣幕で遮る。性の捌け口となることに喜びを見い出だしているような美憂。だが尻すぼみな制止しか上げられない尚樹に時として、驚きのような、絶望のような、暗い目を向けることもあった。尚樹には恋人の真意がわからない。
夏休みの二人の時間を尋ねる尚樹に、美憂は怒りを爆発させる。好きだといいながら何もしない、することは酷いことだけ。何をしたいのか、何が望みなのか、尚樹だけは理解できないと叫びながら首輪を投げ捨てる美憂。
尚樹はそんな彼女を物陰に押し込む。自棄にある恋人を愛で癒やさなければならない。電気マッサージ責めには菊門を、口を汚された際は口淫で愛を注いだように、今回の菊座にも。ペットボトルから水を浣腸剤代わりに押し込み、大学構内を連れ回す尚樹。だが堪えきれずそれを噴出させる美憂を目の当たりにして、さすがに我に返った尚樹は、泣き崩れる彼女を抱えトイレに駆け込む。自身だけは側にいると首輪を握らせ、替えの服を用意する為に飛び出す尚樹。人気のなくなったトイレからは、何かを引きちぎり床に叩きつけ、壁を蹴りつける音がこだましていた。
<第四章・死>
しばらく距離を置いてほしい。美憂からメールを受け取った尚樹は夏を前にして腐っていた。時として行き過ぎたことはあれど、恋人の不貞を耐えている自身の真摯さを何故わかろうとしないのか。鬱々とした気分の転換にと出た街で、その苛立ちは怒りへと変わる。往来での露出に喜悦を浮かべる美憂と、この数日淫欲に耽っていたのだろう部員たちの会話。余りにも向こう見ずな部員と野次馬たちは駆けつける警察官によって現実に引き出されていく。誰もが我先にと逃げ出す中、へたりこむ美憂の手を尚樹は無意識の内に掴んでいた。路地裏で尚樹を認めるなり怯え出し、拒絶する美憂。そんな彼女には絆ではなく、支配こそが肝要であったことを尚樹は悟る。気がつけば眼前にはペットボトルを股間にねじ込まれ失神した美憂が倒れ伏していた。
夏期休講中、逃げるように実家へと戻った尚樹は、自身の保身を確かめる中で、美憂がアイドルとしてデビューしていたことをネットで知る。小さなライブハウスで見たその姿にこみ上げる衝動のまま舞台によじ登り、取り押さえられながらそれでも引き下がれず美憂の後を追った尚樹。その先のカラオケボックスで見たものは汚れきった美憂の姿だった。ライブの客らしき男たちがこれを最後に二度と近寄るなと気だるげにふんぞり返る中、尚樹は蠢くその窄まりに引き寄せられていく。あの日初めて腕の中に収まった際に見せた表情。テーブルの上で四つん這いに重なりあいながら盛った獣のように再び交尾に耽り始めた、美憂のその顔を、へたった下半身のまま床に崩れ落ちた尚樹は見上げ続ける。
尚樹は部屋で考え続ける。何の思惑もなく、腕に抱いた少女にただ愛を注げていれば。あるいは違った結末があったのではないかと。謝りたい、そして許されるのであれば。その一心で尚樹は電話をかけ続ける。夏が過ぎ、部員たちは冷水を浴びたかのようにサークルから遠ざかっていた。
履歴が積み重なる中、初めて途切れた呼出音。喫茶店に呼び出された尚樹は、どこか暗い美憂に借金をせがまれる。美憂は妊娠していた。すでに四ヶ月で時間がない。意識が白く覆われる中でその言葉は耳朶を震わせた。六月の夕暮れ。気がつけば尚樹は美憂に結婚を申し込んでいた。美憂の子であれば愛せること、二人と子供の将来。困惑していた美憂だが、尚樹の辿々しくも続けられる言葉に、いつしかその手を重ねていた。
<第五章・オタサーの姫が告白した結果>
店の中に放置された美憂は幾度かそこで声をかけられたことのある店員に保護された。パソコンを眺める男の、その股間に顔をうずめる美憂は、仕事の一つだという地下アイドル業に誘われる。姫、奴隷、美憂が次に浸ることになったのは偶像だった。客たちから向けられる熱っぽい、濁った視線は美憂を高揚させる。男たちに囲まれ白濁を陶然と受け止める美憂だったが、大人たちは面倒ごとを抱えない。夏の終わりと共に新人の旬も過ぎ、美憂は大学へと戻ることになった。それでもすっかり及び腰となった部員たちが近づくこともなく、一人の危険人物にさえ注意を払っていれば、大学生活は安泰なものに思われた。その変調が現れるまでは。
妊娠12週、数えで四ヶ月目。七月末から現れなくなった生理についての診断を、医師は祝福を添えて下した。その温かい相好に、喉が張り裂けんばかりに縋りつきたくとも、堕胎をとはどうしても切り出せなかった。腹がきりきりと痛むような焦燥感の中、ライブハウスの関係者に連絡を取る美憂。だがその直前で、廊下から漏れ聞こえたかつての声が甦る。責任など考えてもいない、誰の種かも知れない、便所女。初めから頼れる相手ではなかった。こういった面倒を半ば見越しての手切れ金であったのだろうから。絶望の中で美憂の手元にあったのは、数十件にも及ぶ履歴だった。
美憂の告白は思いも寄らぬ結末となった。結婚。そう囁かれたことは一度や二度ではない。だがそれはいつでも睦言の興でしかなく、ことが済めばティッシュに拭われシャワーに流される代物でしかなかった。少なくとも、このような追い込まれた場で出てくるようなものではなかった。
無思慮で利己的で、酷く嫉妬深い男。だがそれも愛情の一つで、間違いなく自身だけを見てくれている。自身ではない何者かを演じる必要がなくなったことに一抹の寂しさはあれど、尚樹であればその隙間をいつか埋めてくれるだろう。美憂は重ねた手の温もりに、それを通して生まれ来る二人の子、その未来図の幸福を夢見る。
<印象に残ったシーン>
「だめ…だめ、だめ、だめ、だめだったら!ほんと、だめだから。たすけて…おねがい、ねえ…ねえ、ねえっ…お願い、だからっ…!」
その声にただならぬ雰囲気を感じ、尚樹は腰を浮かせた。
美憂がすがるような目でこちらを見つめていた。
助けを求めている―?
(中略)
喉を反らし、舌を突き出し、まるで全身で快感を訴えるかのような姿。尚樹の抗議はたちまちかき消され、その悶えように部員たちが感嘆する。
間合いを外された尚樹は、嘆息とともに再び腰を落とした。
ふと顔をあげると、まだこちらを見ている美憂と目が合った。
懇願の視線は消え、まるで驚いているような、絶望しているかのような…。そんな彼女を見ているのが辛くて、わざとそっぽを向く。(第三章・148-149P)
メディア研究部の中でも、とりわけ最低の男。思い込みが強くて、プライドが高くて。独善的で。なにを考えているかわからなくて。ずっと恋人づらをしてつきまとって、さんざん身体を貪って…そして本当に危なくなったら、自分だけさっさと逃げてしまう。「僕が美憂を守るから!」前にそう言われたとき、一瞬、本当に嬉しいと思った。だけどそんな青臭い宣言など、今の彼の頭には、かけらも残っていないにちがいない。(第五章・227P)
「なんだか…尚樹くんって、本当に『桟橋の少女たち』だったんだね…」
「えっ…?それ、どういうこと…?」
「ううん、なんでもない。秘密だよ」(第五章・262P)
<あとがき・2015/8/31>
ゲーム版のあとがきに、美憂は自分の子供ができたら変われるんじゃないかと書いたんですが、小説版でその可能性を追ってくれた形でなんか嬉しくなりました。見事にハッピーエンドです。ツイッターは別として…。
汚らわしい純愛というのがシンボルワードなオタサーの姫でしたが、この小説版がもっともそれにしっくりくるものに感じました。自分以外の何かを愛することができない、相手の中に自分を見て恋していただけの、虚構の恋影とでもいうべきだった原作のエンド3よりも。他人を利用して省みない自己愛に満ちた人間同士が自分を見失った時、相手を自身に最も近しいものとして見ることが出来たという辺りが。愚かで身勝手でなおも利己的で欲望にまみれた、だけれどもそんな相手を互いに必要としている、汚れた愛という感じがしました。ツイッターは別として…。
最終更新が5分前なので、恐らく美憂はこれからも逞しく生きていくのでしょう。原作エンド1もそうですが、これが2 years agoとかになってたら大変後味が悪かった。そこら辺が救いです。
三章からはほぼオリジナル展開で、みさくら氏の描き下ろしイベント絵も何枚かありますので、ゲーム版が好きだった人は購読されることをお勧めします。
ムンク、桟橋の少女たち。これはどういう意図で語ったんでしょう。愛から生へ、不安から死へ。章タイトルはどれもムンクの描いた作品からよく感じられるとされるようなテーマではありますが。桟橋の少女たち。これは幾つか差異があるようで、どれにも共通して描かれているのは橋、少女たち、川、巨木。ライターの方の言わんとすることは正直わかりませんが、尚樹はこの絵の巨木ということでしょうか。橋を行き交って人々と出会う少女、それを綺麗な表の姿でも、水面に映った暗い影でも、木はそこにあっていつでも静かに見つめ続けている…。ということでしょうか。美憂という登場人物的にはそうであっても相手はこの主人公ですから、主観的には何か他の意味、ネガティブなものがあるような気がしてなりません。
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